[93歳のおじいちゃんの想い]
私の前の職場に、
お客様としてよく来てくださるおじいちゃんの話です。
93歳と聞いて驚くくらい、
見た目も若くお元気な方です。
ある時、「あのね...」と
話を切り出してきました。
「どうしました?なにかありましたか?」と聞くと、
「あのね、新聞のお悔やみの欄あるよねー。
俺はさ、そこ毎日見るんだけどさ。
俺が、戦争行く前に付き合ってた女の人が、
お悔やみのとこにこの前のってて。
なんで、わかったかっていうとね、
死んだ歳見ればそうだし、
住所も前と同じで、苗字が変わってねかったんだ。
ということはさー、結婚しなかったんだろうかと思って。
いやーもしかして俺のことずっと想っててくれたんだかなー
と思うと複雑な気持ちになってさー。」と。
そのあとも、自分のことを話してくれたおじいちゃんです。
もう私は、おじいちゃんではなく、
一人の男性として見て、聞いてました。
18歳の頃だそうです。
お互いが好きで付き合っていたんだよなーと。
戦争が始まって、自分にも召集令状が来たそうです。
今だから言うけど、仕方なくいくという気持ちもあったと。
「戦争がなかったら、結婚してたろうなー」と。
「お互い好きだったんだよなー」と、何度も話されます。
本当に好きだったんでしょうね。
戦争では外地にも行ってられたようで、
無事に生きて帰ってこられたんだと話していました。
戦争から帰ってからは、その女性と会うこともなく、
違う人と結婚したそうです。
今は車の運転は辞めたので、
ここに来るときは息子さんのお嫁さんだったり、
お孫さんから乗せてきてもらっています。
「俺、頑張って働いたから、金はあるんだ。
月に一度は孫やひこたちに、ごちそうしてやるんだ!
ほら、なんでも好きなの食べれ、言うて。」
お孫さんも、「じいちゃん、ほら、つかまれ。」と、
手を貸してやってるのを見ると、微笑ましいです。
こちらも、ほっこりします。
おじいちゃんの若い頃を私なりに想像すると、
背が高くて、体格のいい松平健さんのような感じじゃないでしょうか。
顔はきっと男前です。
93歳の今の顔がイケてますから。
このおじいちゃんのほうは、家族ができて、
ずっと命がつながっています。
大家族なんだそうです。
別れた女性はどんな人生だったんでしょうか。
でも、もし死ぬまで想い続けて一人でずっといたとしても、
私はその人生ありだと思います。
おじいちゃんもずっと、
胸の内に彼女のことを気にかけながら、
生きていたんだと思います。
亡くなってしまった女性のもとに、
こんなおじいちゃんの想いを届けられないのが残念です。
私達従業員で、
「素敵な話だねーーー!」と
盛り上がったことを覚えています。
93歳のおじいちゃんの恋心に触れて、キュンとしたお話です(*^-^*)
戦争のない平和な世界であってほしいと願います。